東京地方裁判所 平成5年(ワ)18320号 判決 1994年7月26日
原告 株式会社ジェーシービー
右代表者代表取締役 池内正昭
右訴訟代理人弁護士 榊原卓郎
石川正樹
依田敏泰
被告 伊藤義昭
主文
一 被告は原告に対し、金一二五万〇五二〇円及びこれに対する平成五年五月一一日から支払済みまで年三〇パーセントの割合による金員を支払え。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
三 この判決は、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一原告の請求
主文同旨
第二事案の概要
一 判断の基礎となる事実
1 原告はクレジットカードシステム及び金融業等を営む株式会社である。
2 原告と被告は、昭和五七年四月八日、被告をクレジットカード会員として左記約定の下にクレジットカード使用に係る契約を締結し、原告は、そのころ、被告にクレジットカード(通称ホワイトカード)を交付した。
(1) 被告は、原告の営むクレジットカードシステムに加盟している国内、国外の加盟店においてクレジットカードを使用して飲食、物品の購入、サービスの受領及び金員の借入(以下「キャッシング」という。)等ができる。
(2) 被告がクレジットカードを使用して得た飲食等に対する代金等は、これを毎月一五日に締切り、翌月一〇日に原告に支払う。
(3) 被告が原告に対する債務を約定期日に支払わない場合には、その日の翌日より完済に至るまで、年一八・二五パーセントの割合による遅延損害金を支払う。
(4) 被告がカードを紛失しあるいは盗難等により他人にカードを使用された場合には、その使用については被告がその責任を負担し、被告はその使用金額及び右約定利率による遅延損害金を原告に支払う。
ただし、被告が紛失、盗難の事実を所轄の警察署へ届け出、かつ所定の紛失、盗難届を原告に提出した場合は、左に述べる場合を除いて、原告が受理した日の六〇日前以降発生したものについては、原告は被告に対し、その支払いを免除する。
①紛失、盗難が被告の故意又は重大な過失によって生じた場合。
②被告が原告の会員規約に違反している状況において、紛失や盗難が生じた場合。
③被告が原告の請求する書類を提出しなかったり、又は原告等の行う被害状況の調査に協力を拒んだ場合。
3 原告と被告は、平成四年二月一八日、被告をクレジットカード会員として左記約定の下にクレジットカード使用に係る契約(以下「本件クレジットカード使用契約」という。)を締結し(≪証拠省略≫)、原告は、そのころ、被告にクレジットカード(通称ゴールドカード。以下「本件カード」という。)を交付し、前記2記載のホワイトカードが原告に返還された。
(1) 前記2の(1)、(2)に同じ。
(2) 被告が原告に対する債務を約定期日に支払わない場合には、その日の翌日から完済に至るまで、年三〇パーセントの割合による遅延損害金を支払う。
(3) 被告が加盟店においてクレジットカードを利用して物品の購入、サービスの提供等を受けた場合に生じた加盟店の被告に対する債権について、被告は、左に述べる事項をいずれも予め異義なく承諾する。
①加盟店から原告に譲渡すること
②加盟店から原告の提携会社に譲渡した債権を同社が原告に譲渡すること
③加盟店から原告の関係会社に譲渡した債権を同社が原告に譲渡すること
(4) 前記2の(4)に同じ。
(5) 被告は本件カードの暗証番号を「一一二七」とする(なお、右暗証番号は被告の結婚記念日が一一月二七日であることにちなんだものである。)。被告が故意又は重過失によって暗証番号を他人に知られた場合、その結果生じた損害は被告の負担とする。
(6) キャッシングの使用限度額を二〇万円とする。
4 原告は、昭和五九年四月二日、被告に対し、原告が設定した極度額の範囲内で次の約定により被告が繰り返し原告から金銭の貸付を受けられる極度貸付制度(以下「カードローン」という。)の利用を承諾し、極度額を三〇万円と設定した。その後、原、被告は、平成四年二月一八日から、右極度額を一〇〇万円と設定することを合意した。
(1) 返済開始日は、毎月一五日までに融資した分は翌月一〇日、毎月一六日から末日までに融資した分は、翌々月一〇日とする。
(2) 毎月の返済額は、一万円の分割金に原告所定の利率による利息を付加したものとする。ただし、平成四年二月一五日より、二万円の分割金に原告所定の利率による利息を付加したものとする。
(3) 毎月の返済額を一回でも怠ったときは、期限の利益を喪失し、被告は残元本を直ちに支払う。
(4) 遅延損害金は、残元本に対する約定支払期日の翌日から完済に至るまで年三〇パーセントの割合によるものとする。
5 被告は、平成五年三月一五日、本件カードを使用して、加盟店「くろかわ」に対し一万四九〇〇円の、同「奈々」に対し三万五六二〇円の債務をそれぞれ負担した。右加盟店は、同月末日ころ、右債権を原告に譲渡する旨原告と合意した。
6 その後、同年三月一六日、本件カードにより、二〇万円のキャッシング及び一〇〇万円のカードローンの利用がされている。
(以上の事実は、当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨により認めることができる。)
二 原告の主張
原告は次のとおり主張して、被告に対し、本件クレジットカード使用契約に基づき、計金一二五万〇五二〇円の支払及びこれに対する弁済期の翌日である平成五年五月一一日から支払済みに至るまで年三〇パーセントの割合による約定遅延損害金の支払を求める。
1 平成五年三月一五日の本件カードの利用のほか、平成五年三月一六日の本件カードによる二〇万円のキャッシング及び一〇〇万円のカードローンの利用も、被告自身又はその依頼を受けた第三者によるものである。
2 仮に平成五年三月一六日に本件カードを使用したのが被告と無関係の第三者であったとしても、被告は自己の結婚記念日を記載したメモを本件カードと一緒に紛失したことになるから、暗証番号が第三者に知れたことにつき重過失があり、前記一の2の(4)及び3の(4)記載の約定に基づき、本件カードの使用による債務の支払義務を負う。
3 被告は、前記の二の1記載のクレジットカード使用代金を支払わない間に本件カードを紛失し、さらに、原告がモニターテレビあるいはビデオテープで本件カードを使用した者を照合するための協力を要求したところ、これを拒んだものであるから、前記の一の2の(4)及び3の(4)記載の約定に基づき、本件カードの使用による債務の支払義務を負う。
三 被告の主張
平成五年三月一五日に本件カードを使用したのは被告であるが、その余の原告の主張事実は否認する。被告は、平成五年三月一五日に本件カードを使用した後、右カードを紛失した。被告は翌一六日に紛失に気付き、午後二時半から三時ころまでの間に原告、新宿警察署等に紛失を届け出たが、既に前記一の6記載の使用がなされた後だった。被告は結婚記念日及び家族の誕生日を記載したメモを名刺入れの中に入れておいたので、本件カードを拾得した者は、右メモを手掛かりに暗証番号を見破ったものと推測される。
四 争点
1 平成五年三月一六日に本件カードを使用したのは、被告若しくはその依頼を受けた第三者か、又は被告と無関係の第三者か。
2 仮に本件カードを使用したのが被告と無関係の第三者である場合、被告には暗証番号を他人に知られたことについて重大な過失があったかどうか、その他、平成五年三月一六日の本件カード使用による債務につき、被告が支払義務を負うべき事情が認められるかどうか。
第三争点に対する判断
一 本件の中心的争点
1 平成五年三月一六日、本件カードによるキャッシングにより二〇万円が引き出され、本件カードによるカードローンにより一〇〇万円が引き出されたこと、キャッシングの限度額は二〇万円であり、カードローンの限度額は昭和五九年四月二日以降三〇万円であったが、平成四年二月一八日から一〇〇万円に改定されたこと、本件カードの暗証番号は一一二七であり、これは被告の結婚記念日が一一月二七日であることにちなむものであること、被告は平成五年三月一五日夜から同月一六日までの間に本件カード等を紛失したとして、同月一六日午後二時半から三時ころまでの間に原告、新宿警察署等にカード紛失届をしたことは、当事者間に実質的な争いがない。
2 原告は、本件カードによる右キャッシング及びカードローンの利用が被告自身又はその依頼を受けた者によるものであると主張するのに対し、被告は、本件カードを紛失して第三者に悪用されたと主張する。そのいずれの主張が真実かが、本件の中心的争点である。仮に被告の主張が真実であるとすれば、被告は紛失したカードを無断使用された被害者であるということになるが、原告の主張が真実であるとすると、被告は、原告のみならず、警察にまで本件カードの紛失届をして自己に支払義務がないことを主張しているので、本件カード使用による債務の支払を免れるために欺罔行為を行ったこととなり、被告について詐欺罪が成立することになるのであり、そのいずれと認定されるかは、民事上の債務不履行の問題にとどまらず、犯罪の成立に係わる問題となる。ここに本件事件の重大性がある。
二 被告又はその依頼を受けた者が本件カードを使用したのではないかと疑わせる事実の存在
本件の証拠関係を見てみると、被告又はその依頼を受けた者が本件カードを使用したのではないかと疑わせるような次のような事実が存する。
1 被告は平成五年三月一五日の夜から同月一六日の午後までのいずれかの時点で本件カードを紛失したとして、同日午後二時半から三時ころまでの間に原告及び警察に紛失の届け出をしているが、本件カードが使用されたのは、同日午前一一時三分から一一時七分までの間であり、しかも、カードローンは、一一時三分から一一時五分までの間に、三〇万円三回、一〇万円一回の四回に分けて、限度額一杯まで続けて引き出されており、キャッシングは、これに引き続く一一時七分に、二〇万円の限度額一杯が一度に引き出されている(≪証拠省略≫)。
2 本件カードの暗証番号は、被告の結婚記念日にちなむものであり、第三者が探知するのが困難なものであるのに、その探知がなされている。
3 被告は、原告からの本件カード使用時のモニターテレビを見てもらいたいとの依頼に応じていない。被告は、その理由として、当時、被告が勤務していた会社(先物取引業を営む会社)が倒産の危機に瀕しており、多忙であった旨弁解している(平成六年二月一七日付け被告陳述書(1))。
三 当裁判所の調査嘱託の結果により判明した事実
1 新宿警察署長に対する調査嘱託の結果
当裁判所は、平成六年四月二八日、新宿警察署長に対し、被告が提出した紛失届の内容について調査嘱託をしたが、その結果によれば、被告が新宿警察署に提出した紛失届の届出時刻は三月一六日午後二時五三分であり、届出の内容は「茶革製二つ折(カルチェ)」「クレジットカード三枚(JCBゴールド、DCゴールド、オリックスVIP)」「テレホンカード二枚」「名刺」であった。
一方、被告が原告に対してした紛失届の届出時刻(電話による届出)は三月一六日午後二時四二分であり、届出の内容は「ポケットに入れたカードのみ落とした」というものであり、また、被告が当裁判所に対して提出した答弁書並びに平成六年二月一七日付け及び同年三月一八日付け陳述書によれば、被告は「本件カードのほか、他社のカード一枚及び名刺入れ一個」を紛失したと述べており、右新宿警察署への紛失届の内容と対比すると、紛失届の届出事項の中で最も重要と考えられる紛失したカードの枚数の説明に不可解な食い違いがあることが判明した。
2 株式会社ディーシーカードに対する調査嘱託の結果
前記二及び三の1のような疑問点があったことから、当裁判所は、新宿警察署長の回答書に基づき、株式会社ディーシーカードに対し、被告の紛失届に関する調査の嘱託をしたところ、次のような回答があった。
(1) 平成五年三月一六日午後二時三〇分(届出受付書記載のAMは、PMの誤記入)に被告からDC・VISAカード紛失の電話による届出があった。届出の内容は、三月一五日から一六日までの間にカードをなくしたこと及びなくしたのはカードのみであるとのことであった。なお、このカードには、キャッシング及びカードローンの機能は付されていない。被告はカードの再発行を希望していない。
(2) 被告は、平成三年二月六日午後九時四分にも、DC・VISAカードを紛失した旨の電話による届出をしている。届出の内容は、同月五日午後一時ころ、池袋三越デパートの五階トイレに立ち寄った際に、トイレの棚のようなところに名刺入れを置いたことがあり、その時に置き忘れたと思うとのことであった。ところで、右カードにより、同月六日午後二時四分から二時一一分までの間に、キャッシング二〇万円及びカードローン五〇万円二回の合計一二〇万円が引き出されていたが、右紛失届により基づき、保険により処理をした。被告はカードの再発行を希望していない。右カードの暗証番号は一一二七ではない(被告本人の供述によれば、被告の誕生日にちなんだ一〇〇五である。)。
(3) 被告は平成三年二月七日に神奈川県港南警察署港南台駅前派出所にカードの紛失届を出している。
(4) 被告は、平成三年二月六日に紛失したカードを無断で使われたとして、アメックスカードによるキャッシング三〇万円並びにシティゴールドカードによるキャッシング二〇万円及びカードローン一〇万円について、保険による処理の扱いを受けている。
3 オリックスクレジット株式会社に対する調査嘱託の結果
当裁判所は、新宿警察署長の回答書に基づき、オリックスクレジット株式会社に対し、被告の紛失届に関する調査の嘱託をしたところ、次のような回答があった。
(1) 平成五年三月一六日午後二時三五分に被告から電話によるカード紛失の届出があった。届出の内容は、三月一五日夜カードをなくしたこと、その際他社のカード及び名刺入れもなくしたことである。
(2) その後、平成五年三月一六日に新宿東映の当社キャッシュディスペンサー(現金自動支払機)で、右カードを使って三万円が下ろされたが、被告の紛失届に基づき、保険で処理した。被告はカードの再発行を希望していない。
(3) 右カードの暗証番号は、一一二七である。
4 以上のとおりであり、調査嘱託の結果、被告は、平成三年二月にも、本件と同じ態様によりカードの紛失届をし、キャッシング及びカードローンに基づく支払請求を免れていること、その際にも、三枚のカードをなくしたことになっており、カードの暗証番号が誤りなく使われた理由についての合理的説明がないこと(被告は、その本人尋問において、被告の誕生日にちなんだ暗証番号が誤りなく使われた理由について、カードの裏に鉛筆か何かで暗証番号を書いたように思う旨のおよそ不合理な弁明をしている。)、平成五年三月一六日にオリックスクレジット株式会社のカードが使われた場所は、被告が勤務する会社に近いところにあること、紛失したDC・VISAカード(平成三年二月六日届出)、DC・VISAカード(平成五年三月一六日届出)、オリックスクレジットカードのいずれについても、カードの再発行を希望していないことの諸事実が判明し、これらの事実を総合すると、本件カードは被告又はその依頼を受けた者が使用していたものであることが推認されることとなった。
四 コンピューターのデーターから判明した事実
1 仮に被告主張のように、本件カードが紛失したもので、被告に無関係の第三者が使用した者であるとした場合の最大の疑問点は、被告の結婚記念日にちなんで付した本件カードの暗証番号が、なぜ第三者に知れたかということである。
この点について、被告は、当裁判所からの質問に答えて、平成六年三月一八日付けの陳述書において、名刺入れの中に簡単な年間スケジュール表的なものを入れており、そこに結婚記念日の記載もあり、これを基にして暗証番号を知ったのではないかと推測されるとの説明をした。しかし、右紛失に係る年間スケジュール表と類似のものとして被告が提出したスケジュール表は、およそ通常人が使用するものとは異なった特異なものであり、それ自体疑わしいものである上、原告提出のコンピューターのデーターにより、次のような重大な事実が判明した。
2 原告会社発行のクレジットカードでキャッシング又はカードローンを利用した場合のキャッシュディスペンサーの使用状況は、すべてコンピューターのデーターとして記録されているが、その結果によれば(≪証拠省略≫及び証人山田満の証言)、平成五年三月一六日午前一〇時二九分に新宿伊勢丹内のキャッシュディスペンサーに本件カードが受け付けられ、暗証番号として「一一〇〇」が打ち込まれて残高照会がされ、暗証番号エラーでカードが戻され、さらに、一〇時三〇分に「一一四四」の暗証番号で残高照会がされ、暗証番号エラーでカードが戻されている。
その後、本件カードの所持者は、新宿東映内のキャッシュディスペンサーに移動し、一〇時三七分に「一一二五」の暗証番号で残高照会をし、暗証番号エラーでカードが戻された後、一〇時三八分に初めて、正しい暗証番号である「一一二七」の暗証番号で残高照会をし、引き続いて、一一時三分にカードローンにより三〇万円が引き出され、一一時四分三〇万円、一一時四分三〇万円、一一時五分一〇万円と、たて続けに合計一〇〇万円のカードローンによる引出しが行われ、一一時七分に二〇万円のキャッシングが行われている。
3 右事実によれば、本件カードの使用者は、暗証番号として一一〇〇、一一四四、一一二五と打ち込んだ後、正しい暗証番号である一一二七を打ち込んでおり、被告本人尋問の結果によれば、一一〇〇、一一四四、一一二五の各番号は、被告に関連する何かの数値ではなく、また、被告が提出した年間スケジュール表にも、そのような数値に関連する記載は何もない。そして、右数値を素直に眺めれば、右数値は、正しい暗証番号を承知した者が、最初からその番号を打ち込むのを避けるため、すなわち、偽装工作として、故意に正しい暗証番号と一部異なった番号を打ち込んだものと認められるのである。
右事実に前記二及び三認定の事実を総合すると、平成五年三月一六日に本件カードを使って合計一二〇万円の現金を引き出したのは、被告本人又はその依頼を受けた第三者であることが明白に認められる。右キャッシュディスペンサーの所在場所が被告の当時勤務していた会社に至近のところにあることも、右認定をさらに補強する事実といえる。
五 結論
1 以上の認定事実からすれば、本件カードを使用して合計一二〇万円の現金を取得したのは、被告又はその依頼を受けた第三者であり、原告の本訴請求は理由がある。
2 のみならず、右認定事実からすれば、被告は、本件カードを用いて一二〇万円の現金を引き出していながら、その債務の請求を免れることを企て、原告その他のカード会社及び警察にカードの紛失届を出して、あたかも被告と無関係の第三者が右カードを使用したかのように装い、右金員相当額の支払を免れようとしたものであり、これは詐欺未遂の罪に該当する。被告は本件訴訟について、一貫して、紛失したカードを他人に使われた被害者であると主張し、宣誓の上行った被告本人尋問においても同様の供述をして債務の存在を争っており、その犯情は悪質である。さらに、被告は、同じ手口により、平成三年二月六日、株式会社ディーシーカードのカードを用いて一二〇万円の現金を引き出しながらその支払請求を免れたほか、同日、同じ手口によりアメックスカードを用いて三〇万円、シティゴールドカードを用いて三〇万円の現金を引き出しながらその支払請求を免れ、平成五年三月一六日、オリックスクレジットカードを用いて三万円の現金を引き出しながらその支払請求を免れたものであることが証拠上認められ、右事実によれば、被告が詐欺罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるものというべきである。原告以外のクレジット会社に関する詐欺の犯罪事実は、右各クレジット会社のキャッシュディスペンサーの使用場所、使用時刻、使用の態様並びに各カードの暗証番号の一〇〇五と一一二七の区分及び右暗証番号届出の時期を調査すれば、さらに確実に裏付けられるものであるが、本件訴訟は、原告からの請求にとどまるので、当裁判所でそこまでの調査をするのは差し控え、この点は、以後、刑事司法の手に委ねるのが相当と考える。
3 よって、原告の請求を認容する
(裁判長裁判官 園尾隆司 裁判官 森髙重久 古河謙一)